HEY!



REPORT

ホリエさんの
T.M.Revolution
LIVE REVOLUTION‘99 ~THE FORCE~
1999/03/17,18 東京ドーム レポート


東京ドーム。いつかはここにくると思っていた。来るべくして、この場所に。

私ははじめ、「東京ドーム」に少しだけ抵抗があった。
場所によっては音がひどく歪んで聞こえる…という話をきいていたし、あれだけ広い場所なら、ステージの上にいる人はきっと豆粒ぐらいにしか見えないだろうと思っていたからだ。
さほど音響に詳しいワケでもないのに「音が悪い」という情報をうのみにしていた私だったが、実際そこに行ってみれば、思っていたよりも音はひどくなかったし、ステージの上の人だって「あそこにいる」とちゃんと確認できた。
私がいた席は、17日が1階バックネット裏、ネットは取り付けられたままだったし、18日は同じ角度でそのまま2階へ。
決して“いい席”といえるところではなかった。
でも、ドームは全然遠くなかった。遠くないどころか、近かった。

客層は若い女性ほとんどかと思っていたが、親子連れも数多くみかけ、予想以上にたくさんの男性の姿もあった。
いろいろな人が彼の声を聞くために、この高い天井の下に集まっていた。

ステージの上には大きなビジョンが設置されていた。
私がいた位置からはそのビジョンに映し出される映像を通さなければ、到底表情など見られるはずもなかったが、ビジョンは見ないと決めていた。
画面を通してしまうと、臨場感が薄れるような気がした。
どんなに小さくても、表情なんかわからなくても、私はステージ上の西川貴教を見るつもりでいた。

プロデューサー浅倉大介氏をバンドのKeyにむかえ、前回ツアーのツインギターから、ギタリスト一人へ。
分厚い音のインスト『Promised FORCE』で幕を開けたライヴは、いきなり『Burnin’ X’mas』『蒼い霹靂』『HEART OF SWORD~夜明け前~』とシングル曲が続いた。CDとはまた違った音と声。強い。
声が波のように幾重にもステージから押し寄せてくる。
西川貴教が、歌っている。
そして『HIGH PRESSURE』で会場中が踊る。5万人ハイプレ。すごい、もの凄い。
『Tomorrow Meets Resistance』と嬉しい選曲の後、『THUNDERBIRD』。
高く舞い上がった歌声が天井にぶつかって…声が降ってくるようだった。
ここでの手拍子は必要ないと、私は思った。
こんなに聞かせるバラード、ただじっと耳を傾けるべきだと思った。
はじめは気になって仕方なかったが、ステージから響く歌声は私を、強さの中に優しさも含んだその声だけに集中させた。

その後ステージ上にダンサーが登場し、『アンタッチャブルGirls』。
女言葉の歌詞を男の西川貴教がサラリと歌う。
サンバ衣装のような派手な服をまとっての『Salsa Bazaar』はかけあいが楽しい。
そして、TMRとして思い入れの深い2曲、17日はTMRとしてデビューする際、いちばんはじめに出来上がった曲『IMITATION CRIME』、18日はTMRデビュー曲の『独裁-monopolize-』。
ステージ上も客席も一緒になって歌った。
『AQUALOVERS~Deep into the night』ではもう一度ダンサーが登場し、照明と踊りでこの曲の妖艶な世界を盛り上げた。

彼がギターを弾くと、それは低くうなるような音を上げた。
『Slight faith』では地上30メートルの高さまでエレベーターであがっていき、2階席よりも高い位置で熱唱。
そこから姿が消えたかと思うと、燃え上がる炎の映像を背中に受けてステージ中央から登場したり…と、視覚的にもみせてくれた。

嬉しいという気持ちを言葉だけではうまく伝えられない…と、西川貴教からこの場所にいるひとりひとりへ『True Merry Rings』のプレゼント。
強く、優しく、会場中を包み込むその声は他の何にも勝る、最高のプレゼントだった。

Keyソロをはさんで『WILD RUSH』へ。ボルテージもスピードも一気にあがる。
さらに加速するように『DYNAMITE PASSION』まだまだ全然足りない…と、西川貴教は客席を煽り続ける。
『とっておきのおはなし?新説恋愛進化論』『LEVEL4』と続いて『HOT LIMIT』へ。
音に身を委ねて、一緒に踊る。気持ちいい。みんな、笑顔を浮かべていた。

本編最後『WHITE BREATH』では,客席に向かって「まだまだ暴れられるよなぁ?まだまだ歌えるよなぁ?」そう叫んで、地響きにも似た歓声に包まれながらも、こんなんじゃ全然足んねーよ…とでも言うように首を振っていた。
はねかえってくる声の波に対して“もっともっと”と彼の声は言っていた。
身体を折り曲げ、頭のてっぺんからつま先に至るまで、全身から声を絞り出すように歌う姿が印象的だった。

アンコールは『DREAM DRUNKER』を全員で歌う。楽しい、楽しい。すごく楽しい。
私たちひとりひとりの手拍子と声、ステージの音が全部一緒になってこの曲をつくっていた。
そして、ずっと聴きたかった『SHAKIN’ LOVE』。
ステージの上からは「今ここにいる喜び」が強烈に伝わってきた。
客席もそれに応えるように、そして自分も同じ気持ちだと伝えるように,飛んだり、手を振ったり、叫んだり、一緒に歌ったりして…
それぞれがそれぞれに感情を余す事なく表現していた。

西川貴教はカッコよかった。
力強いだけじゃなく優しさを含んだ声も、無邪気に走り回る姿も、心底嬉しそうな顔も、その生きざまも。
彼を“かっこいい”と言わないで、他に何をかっこいいと言えるだろうか。
他に表現できる言葉が見つからないぐらい、彼はかっこよかった。

東京ドーム、ライヴ会場としては最大級である。収容人数も、ホールの何倍にもなる。
ただそれは数量的な話にすぎない。
私は、ライヴを見る前…一体感が味わえるかどうか、少し不安でもあった。
しかしそれはただの思い込みで終わった。

確かにドームはものすごく巨大な空間で、2階席はステージとの距離も相当あった。
だが、そんなことは微塵も感じなかった。
西川貴教はそんなこと感じさせなかった。
「スゲー近い、近すぎ!」と言って笑い、そして思いの全てを声にのせて、私たちに“これでもか”というぐらいストレートにぶつけてきた。
会場が大きくても小さくても何も変わらない。
私たちひとりひとりは、ステージの上のただ一人を見つめていたし、そしてそのたった一人の西川貴教も、客席のひとりひとりを見つめていた。
何千何万のお客さんを「オーディエンス」とひとかたまりにすることなく、ひとりずつの、独立した“個人”の集合体としてとらえていた。
1対5万ではなく、1対1。
だれもがそう感じた筈だ、彼の声を受け止めたのなら。
受け止めた一人一人が発した声は、お互いにぶつかり合い、さらに大きな歓声となって、そしてその声は「FORCE」となった。
西川貴教の、FORCE。私たちひとりひとりの、FORCE。
ふっと顔がほころぶような、みんなをそんな同じ気持ちにさせる。
きっとこれが西川貴教のチカラ。
『SHAKIN’ LOVE』の後、西川貴教をステージの上に呼び戻したのは、みんなの、ひとりひとりの思いが合わさったチカラ。
目に見えないたくさんの不思議なFORCEで、ドームは埋め尽くされていた。

「まだここから離れたくない」彼が素直に心のうちを明かしてくれたとき、思わず名前を叫んでいた。
私の声は小さすぎて、ステージまでは届かない。
すごくもどかしくて何度も叫んだ。もう一曲だけ聴きたかった。
だから「もう一曲だけ歌わせてください」彼の言葉が嬉しくてたまらなかった。

曲は『Twinkle Million Rendezvous』、T.M.Revlutionメンバー全員の曲。
浅倉大介のピアノと、西川貴教の声。
これがすべて。
途中、涙で詰まって声がでなくなっても、耳を傾けるひとりひとりに対して、西川貴教は歌った。歌い続けた。
そんな姿をみて、この人の、この声に出会えてよかったと思えた。
この声がなかったら、今の私はなかったかもしれない。
たくさんの感情が入り交じって…私も涙がとまらなかった。
全身を耳にして、その声を聞いた。
渾身の力を込めた、西川貴教の、T.M.Revolutionの声。いちばん、いい声だった。

歌い終えると、浅倉大介の胸に抱きついて、しばらく泣きじゃくっていた。
そんな西川貴教の頭を、浅倉大介はそっと撫でていた。
2人の信頼の深さが、そこにみえた。
「T.M.Revolution」という…目標ともいうべき名をさずけた浅倉大介。
その名にひけをとらないように前を向き、顔を上げ、走り続けてきた西川貴教。

無限大の可能性を秘めたお互いがいて、はじめて成立するこの瞬間。
喜びをかみ締めるように客席を見回す姿から、手を振る姿から、深く頭を下げる姿から、“ありがとう”という言葉だけでは言い表せない彼の気持ちがみてとれた。
私も何度もありがとうと叫んで、手のひらがジンジンと痛くなるほど、拍手を送った。
ほんとうに、ほんとうに、いいLIVEだった。

どうしようもなくつらかったとき、私を支えてくれたものの中の一つに、西川貴教の声がある。
ライヴという場所で、おしゃべりだったり…奇抜な衣装だったり、そういう自分を覆ったものをすべて脱ぎ捨てて、西川貴教は身体ひとつでぶつかっていく。
大勢の人の目の前であっても、涙を隠そうともしない。
感情をすべてさらけ出すその姿を見て、つまらないことで悩んだり、落ち込んだりする自分がいかにちっぽけなものか気付かされた。
だからもうやめようと思った、悲観的になるのも、卑屈になるのも。

ライヴを通して、そんな…つい後ろ向きになりがちな今をポジティブな方向へと導く、ほんの少しのヒントとたくさんのチカラを、西川貴教とこの音楽は与えてくれた。
私が私らしくいるためのFORCE。前を向くためのFORCE。
数え切れないほどのFORCEとともに、私は満たされた気持ちで胸がいっぱいだった。

余韻に浸る間もなく、3月19日、突然の「T.M.Revolution封印」。
でも、西川貴教が歌わなくなるわけじゃない。これで革命が終わったわけでもない。
T.M.Revolutionがさらに大きな革命を起こすための“進化”の期間に入るだけのことだと、私は思っている。
どんな名であろうと、西川貴教はきっとライヴに戻ってくる。
歌がすべて、ライヴがすべてなんだと思えたから。
全てを惜しみなく、出し尽くした西川貴教。
次は彼の違った一面が見られるかもしれないし、またきっと私たちをドキドキ、ワクワクさせてくれるに違いない。

自分を変えようと思って少し顔を上げることだって、それも「革命」。
常に自分の中の「革命」を続行していかなければならないと、私は思う。
自分にしかない“FORCE”を日々の生活の中で探し出し、それをしっかりと携えて、少しずつでも新しい道を切り開いていくべきだ、と。
何故なら、この革命に終わりはないのだから。
まだまだ、これから。