店内のいろんな場所に据え付けられたテレビからは延々とプロモが流れる。「松ごっつ」でエンディングテーマにもなった「しやわせ」。今日は唄ってくれるだろうか。
そんなこんなでPM7:45、いよいよ開演。
ぱっとステージへ出てきた倉本さんの顔を見あげた一瞬に、ちょっとぞくりときた。
なんだろう。この感覚は何だろう。
考えているうちに音が身体を取りまく。
ライヴが、始まった。
まずは初めておろしたという「ムード」「くじら女」の2曲。どちらかと言えばポップな曲調。のりやすいし、聴きやすい。こんなノリだったのね、ふむ・・・と聞き入ることしばし。 師匠の声がいい。全ての音はもちろんだけど、生で聴く倉本氏の声がこんなにも腹に響くとは思わなかった。ダウンタウンファン的に言うと「あ〜〜あ〜、え〜え〜声〜〜♪」。ニュアンス、伝わる(笑)?? とりあえず唄い終えて、ご挨拶のトーク。「前回はアコースティック一本でやって、今回はこんなんや」「こんな感じじゃなかったと思ってる人、多いでしょ。大丈夫、これからです(笑)」
MCも楽しい。言い方は大袈裟だが、ちょっと松本さんの気分になった。上から師匠の声が聴こえ、私はそれを見上げている。ちょっと、掌の上を感じてしまった。周りが青空で私が作務衣なら、完璧である。かもしれない。
そして「海へ倣へ」という曲の後、いい意味でとてもうるさい曲、「しやわせ」のCDにも収録されている「ペパーミント蛸」へ。私はこの曲がかなり好きだ。歌詞の世界観にへろへろで腰くだけになった。青空のような色のタコの歌。つまるところ、わけが分からない歌。でも、何かが分かる気がしてしまう、とても不思議な歌。 (詳しい「ペパーミント蛸」話は私のHP上のレポ http://www02.u-page.so-net.ne.jp/pb3/itayaba/Libido-no-id/libido-000.htmlをどうぞー)
倉本氏の世界は空想や夢から生えてくる。随分と分かりにくいところであるはずの個人のそれを、師匠はメロディと歌詞とで他人である私達に上手い具合に伝えてくれる。
とてもシュールだ。「食べれる、でも消化不良」的なシュールさが、倉本氏の歌には漲っているのだ。
だから「理解はできない。だけど、共鳴する」
そんな感覚が、私はライヴの間中ずっと拭えなかった。
中盤からは人も増えて、小さなライヴハウスがあつい。 曲はどんどんとしっとりしてきて、聞き入らずにはいられなかった。「世の中は眠っているヤツばかり。みんな起きて、もっと夢を見んと」「松本人志なんか、起きたまんまで夢見よるからね」 倉本氏はそう言って、唄った。
空想の世界が今日や明日を楽しくする、それを忘れてはいけない。 そんな歌を、唄った。
とても簡単でとても難しいことを、彼は楽しそうに唄っていた。 気づけば私は涙が出そうで、でもそれが何の涙かよく分からなかった。「かしこくなりたい・・・かしこくなりたくない・・・」「しやわせ」を合唱しながら、私は確かな感動と妙な感傷に引きずられていた。 いい歌唄いだなぁ、と本気で思った。
ダブルアンコールを終えて、師匠はぴよよんと弦の切れたギターを抱え「うれしい、今日はほんまうれしい」と客席に笑いかけた。 本当にやりたいことをやっている、やれている人間の顔。 完全に「生きている」ふたつの眼。
ライヴ前のぞくりと走った感覚を思い出す。 この人はすごい。倉本美都留という人は、すごいぞ。 拍手をしながら、私は首を傾げて唸っていた。すごいぞ、と唸っていた。 ライヴで、思い知った。
ととと、とにかく、いいーんです!!(慈英風)思いがけずイタイレポートになってしまい、私の印象と立場が心配ですが(爆)、倉本さんの歌がめっぽういいのです。
HEY!HEY!HEY!の放送作家としてだけではなく、是非アーティストとしての倉本さんの一面も見ていただきたい。
こういう言い方はアレかも知れないけれど、松本人志の雰囲気みたいなものが本当に好きな人なら絶対倉本さんの歌に共鳴できるはず。そして決して「松本人志に付属するもの」としてではなく、好きになれると思います。
一度、月一回のライヴにいらしてみてはいかがでしょうか。
以上、現場からタシロがお伝えしましたっ。
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