REPORT
視聴者の皆さんが送ってくれた収録レポート!

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タシロアヤさんの
倉本美津留ライヴレポレポート
(98/06/22;原宿クロコダイル)

19980622。月曜日。
 右を見ても左を見ても、傘傘傘傘傘傘。
 上を見ても下を見ても、水水水水水水。
 倉本さんに渡す花束を買う。
 ひまわりを入れてもらった。
 日影で咲くひまわりの強引さが、弱々しくも太陽のようで好きだ。 すっかり暗くなって明るくなった渋谷の街を、ライヴハウスへ向かって歩く。 いつのまにか、腕の中のひまわりを守るように歩いていた。 いつのまにか、雨の憂鬱さを遠く忘れていた。
 今回は、倉本さんと徳さんの二人のみのステージ。 小さなドラムとギター2本が、全て。
 少し古ぼけた雰囲気の木製のベンチに腰掛けて、マイクを引き寄せて、時間通りに倉本美津留が「こんばんわー」。 まずは『めでたし』という曲から。
 皮肉めいた歌詞がギターの音に乗って、変にやさしいから参る。 続く『神様のご褒美』は「ごっつえぇ感じ」のエンディングにもなった曲。これもアコースティックで聴くと全く雰囲気が違って、よろし。 前回のライヴとはまた違う、静かな静かな流れ。それでも温度の高い激しさが所々に混じってきて、その何とも言えないバランスが会場の空気と私達を揺さぶる。
 トークが少な目なせいかギターのみのせいか、いまいち前半あたたまらなかった客席に、倉本さんは「今日の客、厳しいなぁ」と苦笑い。 しかし、最後には会場全部一緒になって『ペパーミント蛸』のフレーズを何度も叫ぶこととなった。
 倉本美津留に引きずられていく。どんどんどんどん持って行かれてしまう。 心が共鳴して共鳴して、共鳴しまくったあげく、涙腺の蓋がかぽん、と開いてしまう。
 やっぱり、この人の歌がいい。

 今回は選曲がとても気に入った。ツボだった。 特に『C幼笛』(しーようふえ)から『ドラゴンフライ』そして『すすめ』。 偶然に対する賛歌『C幼笛』。
「偶然達に感謝しよう」というフレーズにまず軽く心を殴られた。『ドラゴンフライ』は蜻蛉(トンボ)の歌。ステージの後ろに据えられたスクリーンに懐かしい8ミリの映像が映し出され、歌詞の一部が視覚から入り込んでくれば、眼球が熱くなって、心から血液。
 とどめは『すすめ』。
 目の端から透明な水が流れ落ちて、完全に死体。 参った。参りました。泣けました。本気で。

 他にも今回初めておろしたという『るるるるる』もかなり、相変わらず。「♪赤い血を吐く・・・」って来ておいて「女子高生〜♪」。「赤い血を吐く女子高生」そんなシチュエーション、頭に思い描いたらおもしろすぎて笑えない。
 徳さんの「るるるるる」と繰り返される低いコーラスも、とても不思議な雰囲気でメロディーを彩る。 あまりにも不思議すぎたのか、客のほとんどが置き去りを喰らったようにぽかんとしていたのが、印象的だった。 
 曲の間、倉本さんは笑顔で私達に語りかける。「もっと声出そう。唄ったら気持ちいいよ。しやわせになれるよ、うん」「いつのまにかしやわせになってたり、ふしやわせになってたりするでしょ。今唄ったらしやわせを掴み取りできるんやで。こんなん、めったにない。唄っていこ」
「俺がしやわせ見せたる!」
 人に幸福をあげるというのはとても簡単でとても難しい。 それを大胆にも豪語して、実際に実現してしまうのだから、この人は。 弦が吹っ飛ぶまでギターをかき鳴らし、会場を巻き込んで師匠は唄う。 誰もがいつしか笑顔で彼に声を合わせ、唄っていた。 誰もの手の中に、いつしか確かなしやわせが訪れていた。
 アンコールを終えた師匠に花束を渡すと「ありがとう」と微笑まれ、ワタシはそれに慌てて「ありがとうございました」と返事をしてしまった。「お疲れさまでした」「また頑張って下さい」 今思えば、そんな気の利いた台詞のひとつも言えなかったことが悔やまれる。 けれど、その場ではもうその言葉しか見つからなかった。 いい歌をありがとうございました。
 それを一番伝えたかった。

 ワタシもいろんなライヴに行ったことがある。 けれど「三途の川を渡ろうとしている子供を呼んで引き止める」という内容の歌なんて聴いたことがないし、ましてその中でコーラスとして本気で「おーーい」と客に声をかけさせるなんて、そんなライヴは知らないぞ!?知らなかったぞ!! あなたも知らないでしょ?!
 だから、知りに行きましょ!!(^^)

 倉本美津留の曲は、本当に身に染みます。 小さなライヴハウスで堪能できるのも、今のうち!(だと思う!!) 何気ないしやわせを掴みに、是非行ってみましょうや。ね?(^^)

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