彼女のライブには一度だけ行った事がある。去年の武道館だ。
その時の印象を率直に述べてみれば、「まだまだ発展途上」という印象だった。しかし、果てしない可能性は感じられた。
ステージ上で、武道館の大勢のオーディエンスを前にしての堂々とした態度に私は圧倒された。その時からすでに"カリスマ"的要素は十分に備わっていた。ただ、音楽的に、まだ完成されていないような印象を受けた。
あれから約1年。一体、どれくらいの成長を見せてくれるのだろう。
もちろん、武道館と帯広の小さなホールとでは比較対象にはならないかもしれないけれど、"比較"という事を抜きにしても、とにかく私は「相川七瀬帯広公演に一見の価値アリ」との判断を下した。
さて、帯広公演。帯広で相川七瀬を見に来る人たちというのはどのような人なのか、果たして盛り上がるのであろうか...など、様々な疑問や不安を抱え、私は会場の帯広市民文化ホールへと足を運んだ。着いてみると、客層は、20代の若者が中心、というところであろうか。小・中学生や中年層もちらほらと見受けられる。
まぁ、この客層は帯広に限らず、相川七瀬の一般的な客層と言えるのではないだろうか。しかし、私には一つ不安があった.....。
「帯広の人はライブ馴れしてないのではないか」という不安が(失礼か?)。
"聴く"ところでまでいたずらに叫んだりしないだろうか...。いい"ノリ"を作り出せるのだろうか...など。
しかし、そんな不安は全くのムダであった。いや、実際にライブ慣れはしていないのかもしれない。だが、相川七瀬がそんなオーディエンスをライブに集中させ、楽しませ、魅了させ、相川七瀬の世界へと確実に連れていってくれたのである。相川七瀬の世界。そこは、常に自分に正直にまっすぐに、情熱を持って、そして、愛を持って生きていく、そんな勇気をみんなに与えてくれる世界だ。私は歌う彼女を見つめながら、ひたすら「カッコイイっ!」と心で、時には声に出して叫んでいた。もう、彼女の全てがカッコ良く見えたのだ。ステージ上の彼女は、誰よりもカッコ良く、そして強い。それでいてとても優しく、無邪気な笑顔も見せてくれる。
激しさと優しさ。相川七瀬はその両方を持っているのだ。
相川七瀬は惜しみなく、オーディエンス全員に愛を与えているように見えた。歌う姿、MCで話す姿、その全てに愛がある。きっと彼女は自分の音楽を聴いてくれるファンを心の底から愛しているんだろう。
途中、何人か客席から「アピール度の高い人」を選び、ステージ上で一緒に踊る、というシーンがある。ステージ上から手を伸ばし、自らの手でファンをステージに引き上げる。歌いながら、手を伸ばすファンの手を気軽につかむ。持っているタオルで汗をふき、それを客席にサッと渡す。飲んでいた缶ジュースを当たり前のように客席の女の子に渡す。これらの事を、本当に自然に、何の違和感もなくやってしまう人なのである。
そこには、ステージと客席の境界など全く無いように思えた。
オーディエンスはそんな彼女の世界に引き込まれ、気づいた時にはみんなが歌い、踊り、飛び跳ねる。本当の意味でのステージと客席の一体感がそこにはある。気持ち良く、何もかも忘れられる空間。
相川七瀬はそんな空間を作り出せる真のアーティストに成長していた。
音楽的にも、かなり成長したと思う。声量も相当なものだった。
アーティストとしてはこれまで述べてきたとおりの成長ぶり。ラストでは涙も見せたが、しっかりと歌い上げた。
最高潮の盛り上がりを見せ、アンコール終了後、バックバンドも引き上げた後で「気分ええなぁー」と言い、「よっしゃ!」とアカペラで「Sweet Emotion」を歌い出す。歌いだした彼女の後を追うように会場全体での大合唱となった。最高のムードで、ライブは終了した。
すでに全員が相川七瀬の虜となっていた。みんな「帰りたくない」「ここから離れたくない」と思った事だろう。一緒に行った友人も「明日からまた現実に引き戻される」と言った。
だが、しかし、である。たった今、相川七瀬が見せてくれたこの世界だって、立派な現実ではないか、と私は思う。あんなふうに、カッコ良く、強く、優しく生きている人が現実にいる。彼女は音楽の世界で生きているけれど、みんな、それぞれの世界で、相川七瀬のようにステキな現実を手に入れる事がきっとできるんじゃないだろうか。考え方、生き方をちょっと変えてみれば自分だってあんなふうにカッコ良く生きる事ができるんじゃないだろうか。
もちろん、そんな簡単な事ではない。でも、それぞれの場所で、みんなが輝いて、自信を持って生きる事は決して不可能な事ではない。このようなメッセージを相川七瀬は残してくれたような気がする。
このライブの直後、「相川七瀬倒れる」とのニュース。長いツアーで疲労もかなり溜まっていたものと思われる。しかし、この日のライブではそんな事を微塵も感じさせなかった。やはり、この人はカッコイイ。
本当に"プロ"なのだった。
体調については心配したが、とりあえず復活した模様で一安心。
やはり体が資本である。健康管理をしっかりとして、またカッコイイ生き方を私達に見せつけて欲しいと思う。
相川七瀬のツアーはまだまだ続く。私も横浜アリーナ、日本武道館、そして大阪城ホールに足を運ぶ予定。もっともっと彼女の世界に入り込みたい。
そして、私もカッコイイ生き方で幸せな現実を手に入れられるように、相川七瀬から愛と勇気とパワーをたっぷりと吸収してくるつもりである。
以上の長文、読んで頂いてどうも有り難うございました。
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